徳島県の山の中の上勝町は人口2000、約850世帯で、ホームページを見るだけでも町づくりのアイデァが満載された楽しそうな町です。
上勝農協が提案したすきま商法の「葉っぱビジネス」により町起こしが軌道に乗った町で、この事業に参加するメンバーは老齢の農家の婦人が多く、年間1000万円を売り上げる主婦もいる。
彼女たちはパソコンを活用し、第三セクターいろどり社の情報提供により市場の動向を把握し、天気予報を見て高値で売るように出荷調整し、受発注の業務をこなす。時には飛行機で京都や東京の高級料理店まで足を運んで美味しいものを食し情報収集や営業活動までもする。
彼女たちには働き甲斐と楽しみが生まれ、高齢化や医療、介護、年金問題はどこ吹く風のような上勝町に変わらせた。「葉っぱビジネス」は山間部の過疎地に活力を注入し、さらにそのノウハウが好循環を誘発して町起こしが加速され、全国で最も注目される自治体として視察団や観光客が押し寄せるまでになった。
この町では、いろいろな町起こし事業が展開されている。
タクシー構造特区を申請し、有償ボランティアが輸送サービスを始めた。ダイオキシンで町の焼却炉が使えなくなったので、行政がごみを34に分別することを仕掛けて、議会は「ゴミゼロ宣言」を出すまでになった。したがってこの町では指定ごみ袋は売れない。
役場の支所を郵便局内に設置し業務委託をした。2つの診療所は公設民営化した。
地域通貨を実験中で、温泉を沸かす燃料は廃木材を使うことにして、町民はルール通りにクギを抜き結束して温泉に持ち込む。通貨を受け取っては町の商店で買い物をする。ポイントカードまで発行し管理データで事業運営をする。
町民はリユース食器を使い、時に応じて集会して、ブレンストーミングで町起こしのアイデァを出し合う。 行政は良いものは取り入れ、第三セクター方式で事業化し雇用の促進と定住化を図る。
驚くべきことに、最近マイクロソフトと提携して、過疎地向けのソフトウェアーを協同開発するまでになった。
しかし、人口減は続いて、町の財政も厳しくなる一方だ。5つの第三セクターはトータルでは黒字だが赤字の事業もある。一方で「葉っぱ御殿」が建つほどに町民生活は豊かになった。町の積極的な施策のおかげで、町民の懐には多大な投資効果が転がり込んできている。
上野原市と同じような情報通信基盤整備事業は昨年から始まりこの8月に運用を始めた。合併をしないから特例債は使えず、事業費の9億1千5百万円のうち、町が1/2を、県が1/6、国が1/3を出しあって光ケーブルを敷設し、四国電力の子会社の徳島ケーブルテレビが事業運営をしている。告知端末は無く、デジタル放送の視聴だけで加入金が5万円、月当たり使用料の2700円を各家庭は負担する。
上勝町は人口が上野原市の1/14なのに、4億5千8百万円を負担した。上野原市の負担は5億円で、各家庭の加入金はゼロとなり、テレビ視聴だけでは使用料に月1050円を負担する。上勝町の施策はデジタル放送の視聴に対応している。上野原市の場合は告知端末がUBCから無償提供され、全家庭が安心で公平なネットワーク社会づくりへの展望を持つ。
上勝町の町起こし行政は、上野原市より優れていることを万人は認める。しかし、ことこの情報通信基盤整備事業に関する限りでは、上野原市の行政の方が格段に優れた街づくりであることが容易に理解できる。
上勝町が特筆されているような自治体形成を推進できたのは、上勝農協の旧職員である横石知二氏という仕掛け人の功績が大きい。「葉っぱビジネス」が成功し、町民が発奮してアイデァを出し合ううちに、玉突き現象が起こり仕掛け人が次々と現れて町が活性化している状況が見て取れる。
翻って、わが上野原市の情報通信基盤整備事業を見ると、上野原市方式の仕掛け人の存在が感知される。民活を利用し、市のリスクと家計負担を少なくする上野原市方式の第三セクターの発想は卓越したものであり、間違いなく上勝町の仕掛け人を凌いでいる。
上野原市においては、「葉っぱビジネス」と同じように「光る街構想」から、玉突き現象が始まることを期待している。